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愛で癒す その2

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愛で癒す その2

lips 愛で癒す その2

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去年の今頃、何をしていたっけ?と考えてみる。去年のお盆休み、私は暑い暑い2階の部屋で、エルンストの「百頭女」に取り組んでいた。今年は1階に涼しい部屋をしつらえたから、去年とはずいぶん違っている。

「百頭女」はマックス・エルンストのコラージュによる一連の作品集で、3冊ほど出ているうちの1冊目。 

3冊目の「カルメル会に入ろうとした少女の夢」を見た知人が、修道会の名前はエルンストのでっちあげかというので、カルメル会は世俗を絶って、ひたすら神だけに集中する観想会という厳格な会らしいですよと言ったら、驚いていた。モニカさんも観想会に入って、絵を描いていたら?なんて言われたことがあったので、知っていたのだ。世俗を絶つとか、若死にするとかに憧れるのが、少女の頃。ここはじつに穿っている。1.2.3と巻が進むにつれてエルンスト先生はご自分を少女に同化させて行く。女性に大モテの美男子だったエルンスト先生。少女と化すには無理があって、作品はどんどん希薄な印象になって行く。その意味で百頭女は充実している。なぜならエルンスト先生、男の立場に止まって、百頭女を我が妹(自分の分身)として描画しているから。

シュール
シュール

百頭女は、英雄的な男の登場に始まって、処女懐妊に3回失敗する。そして4回目に成功する。そうして生まれたのが語り手なのか、百頭女なのか解らない。語り手は英雄的な男にして、処女であるのかもしれない。そして最後にまた最初のヒロイックな男の登場場面に戻る。こうして百頭女の物語は、永遠に繰り返すかと思われる。妖しの美女「百頭女」の謎は結局、謎のまま、読者は煙に巻かれてページの間を行きつ戻りする。そして秘密は暴かれないから面白いんだと、本を閉じる。シュールレアリスムは難解さにおいて、日常から逸脱するかに見えて、ニヒルな後味で日常に回帰する。これが私の昨年のお盆だった。

Like Saint Sebastian
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ヒロイックな男性像には、なぜか聖バスチャンのイメージが見え隠れしている。殉教者はヒーロー&ヒロイン。エルンスト先生は19世紀生まれだから、ボードレールが悪魔を描いた最後の文学者と言われるのと同じで、ちょっと感覚的に古い。懐かしいと言うべきか?

それから、去年のお盆明けには、ぎょっとすような炎症が出ていた。左手の甲にボチボチと直径1センチにもなる炎症があらわれて苺のようなイボとなった。それを3ヶ月×4セットの忍耐で耐えた今、(忍耐は3で進む参照)イチゴの赤身は今や消えたし、そのあと手首の皮膚が黒ずんでごわついていたのが、ぼろぼろと剥がれ落ちて、かさぶたになっているし、治癒が進んだのは事実だけど、これら炎症を取り巻く想念は何か?と言えば「愛で癒す」で書こうとしたことの芯だった。八重咲の、薔薇の花の芯は、花が開いてもなお隠されているように、愛に傷ついた人々の話の芯も、なかなか現れないものだった。

愛に傷つく。そこには深い情念がある。家庭内暴力やストーカー行為の根底にあるのは歪んだ愛だ。もとを正せばその情念の発露は愛なんだけど、そこに怒りや復讐、征服欲などの悪意が混じる。そしてその悪意を生じさせるのは双方に問題があるからだ。意外に思うかもしれないけれど、被害者の中には、加害者がいて、加害者の中には被害者がいる。これが事実。そうでなければ、加害者にも被害者にもならない。右の頬を打たれたら、左をも向けよと言うけれど、ぶたれるような要素を、そもそも持っていなければ、ぶたれることもないのだ。

怒りも復讐も征服欲もなく、ただ愛に満ちていること。これが宇宙から注ぐ本来のエネルギーで、命あるものを活かし育んでいる正常な波動。波動調整はこの正常波動に合わせていくことだという。そこで右の頬を打たれない生き方に、思いを馳せる。真実はいつだって、秘密の中に隠されているから。エルンスト先生は作中で繰り返し言っていた。百頭女は秘密を守る、と。

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