霊界にて
ふたつめの夢は、まるで映画を観ているようにビジュアルだった。だだっ広い空間に、小さな黒い入り口が開いていて、そこにターコイズブルーのリムジンが静かに滑りこんでくる。長い車体の中にはゴージャスな棺桶が入っている。え、これは霊柩車なのかと見ていると、棺桶に横たわっていたのは、花に埋もれ、若返って艶々としたした裸の祖母だった。どういうことかと思っていると、棺桶は黒い小さな間口から、建物の中に運び込まれて行く。何が起こっているのかと、あとを追えば、中では祝宴が張られている。白いテーブルクロス、ブーケ、輝くグラス、豪華なテーブルセッティングの上には、ご馳走然として祖母が皿に盛られて湯気を立てている。いったいこれは何事かと頭にきて、建物から飛び出してみたけれど、気になって戻ってみると、テーブルの上に祖母の姿はない。食べられた形跡もないけれど、そこに集っている人々に知人らしき人はいない。すると後ろから、怒った顔の祖母がやってきた。物凄い形相なので怖くなり、私は再び建物の外へ逃げ出した。祖母は追いかけてくる。私は逃げる。恐怖の中で思う。こんなのは何かの茶番だ。ついに私は大声で怒鳴った。「あなたは、死んだはずだ!」自分の声で目が覚めた。
Thank you for reading this post, don't forget to subscribe!今なら、事の次第がよく解る。祖母は私を心配していたのだ。生前から私は彼女の気づかいを鬱陶しいと、感じていたけれど、本当はとても頼りにしていた。祖母の死、無能な母、忙しさに追われて自分の自由が八方ふさがりな毎日に、心は萎えて、途方に暮れていた。祖母はそんな私の状況を、あの世から、見かねていたのだった。
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