花食う春
花食う春
今年は雛の祭りに梅が咲いた。冬が寒かったからね。去年は2月の梅にミツバチが来ていたけど、今年はいない。もう、ほかの花が咲いていたから? だと、いいんだけど。
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梅切らず馬鹿というから、枝を大きく切って活けてみた。目の前にでんと梅を据えて、清々しい香りを胸いっぱい吸い込む。外では楚々とした印象だったけど、近くで見ると艶やかなのに、凛としている。梅ってこんなに素敵だったんだ。
静かに花と向き合えば、植物の辛抱強さが思われる。花を咲かせるって大変なことなんだろうね。ジュワルクール大師曰く、東洋ではディーヴァ、西洋では天使と呼ばれる精霊たちは、自然の巡りが滞りなく続くよう、絶え間なく働いているという。こうして梅の花を眺めていると、うんうんそんな感じと、うなづいてしまう。花のディーヴァたちはきっと今、大忙しだ。
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そうだ、梅こんぶ茶、飲もう! いそいそとキッチンに立つと、棚の桜茶が目についた。あら?梅の花も、お茶になるんじゃない? 調べてみると、当たり! 梅の花には化痰(けたん)作用なんかの薬効もあるんだ。消化不良にも効くんだね。
ハーブなんかやってると判るんだけど、生の花を使うとホントに美味しくて、ドライじゃつまらなくなってしまう。花の命(エネルギー)をじかにもらって、こちらも目がパッチリする感じ。そこでもう一度、庭に走り出て、梅の花を摘む。これで塩漬けも作ろう。梅と言えば、実のことばかり考えていたけど、花も活用できるって、どうして気が付かなかったのかなぁ?
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梅の花と煎茶をお茶パックに入れて、梅茶にしてみる。いい香り! 春雨スープにも花を入れてみる。これまたいいお味! 花には甘い香りがあるけれど、食べると苦味があるもの。香り甘く、その味は苦い・・・憎いねぇ。すっかり花食う春は爛漫だ。
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植物は日中、日光と二酸化炭素を呼吸して、酸素を出している。日が沈むと今度は酸素を吸って、二酸化炭素を吐き出す。なるほど日が暮れた今、目の前に梅があると、なんだか息苦しい。そこで梅を部屋の外に出して、階段の踊り場に置いた。ここ寒いから、花が長持ちするわね。
ディーヴァたち、昼夜を問わず花の手入れにいそしんで、花は枝から落ちぬまま、香りと色艶を保ち、花びらは、わが手によって塩漬けの瓶に納まり、塩をうすくれないに染めながら、今も香りを保っている。
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