藍は愛の夢を見る
藍は愛の夢を見る
本の整理があらかた終わった。今度は並べ方の吟味だ。これは一階の方へ持って行って、こっちは大きい本だから画集と一緒にして・・・手放した本、手元に残った本、私が生まれる前からある本。本には諸々の想いがこもっている。先祖たちと彼らが生きた時代、大きな戦争を通り越した20世紀初頭から、闘いが続く21世紀の中、本の中の言葉たちは不幸を立脚点に、悲劇のカタルシスに憧れて、反体制主義に走る。我が家にはこんな本がいっぱいだった。ページを繰って言葉の海を泳いでいくと、時に溺れそうになるけれど、自分に必要なのは、たった一行なのかも知れない・・・それでいいんだ。もう過剰な思い入れはいらない。整理したんだから。
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片づけは潜在意識との対話だ。結構エネルギーを使うので、ちょっとひとやすみする。椅子に座って目をつむり目の中の闇に入って行く。両眼から力がふ~っと抜けると、そこはもう宇宙だ。星々を抱く宙(そら)の闇へ私は漕ぎ出して行く。
無数の未知なる星々を、腕(かいな)に抱く天空は、深い藍色を帯びて、全ての光、全ての波動、全てを含んで全てを癒す愛の波動で、今も永遠に向かって膨張を続けているという。夜空を見ると癒されるのは、愛の波動ゆえだったのだ。なんだかじーんとする。宇宙の営みはなんと壮大であることか! 私は自分のちっぽけな悩み、苦しみをしばし忘れて想いに浸る。ふと目を開ける。あ、本の並べ方を、考えていたんだっけ・・・。
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目をつぶって宙の闇に浸る。コレなかなか癒しになる。そのままコテっと横になって、眠ってしまうこともあるけれど、心が鎮まると自然に細やかな波動が流れ込むように思う。アリス・ベイリーの本の中で、秘教学徒たちは就寝の際、夜の外で眠ることが望ましいとされている。夜、外で寝るぅ?と、驚くなかれ。夜空の静寂と自分の潜在意識を一致させることは、精神修養として有効だと察しが付く。大地と空の間にただ一人、梢がざわめき、虫の声が聞こえるような「外」だとすれば。
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暮れかかるころ、夕餉の薬味にしようとキノメを摘みに庭に出る。アジサイは霧雨の中、元気に枝葉を広げている。来年の花付きを良くするために、花をみんな切ってしまったから。
家の真南に吊り下げたネイビーヴァイオレットのアジサイは、少しずつ乾いて縮んでいく。キッチンでキノメの葉っぱを細かく刻む。す~っと涼やかなにおいが立ちのぼる。夜が来て、天空の藍は愛の夢を見ている。
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藍は愛の夢を見る
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