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メンソレ

メンソレータム

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ついに顔にもビランが出た。これは両手の接着剤の薬害とは少し違う気がしていた。背中、仙骨、脚、腕に、ぽつりぽつり出て、今度は顔。おととし、仙骨の周辺に出始めたとき、南先生から仙骨の周辺に炎症や傷ができるのは、過去生に起因すると、教えて頂いた。私の場合、一本気な性分が周りに迷惑だったことに起因するらしい。今生のわが身を振り返っても、なんだか判る気がした。

過去生の出来事は仙骨を通して具現化すると言う。そしてビランが、どこに、いつ出るかは自らの細胞が決めているそうだ。自分のカルマの解消のために、今ぞこの時のタイミングでビランは出るのだと、南先生の伝。自分も顔の赤い傷口に手をやりながら、このビラン、どこか進んだ印象だった。そう、修復作用が進んでいると、思えたのだ。

以前は、皮下の接着剤を出し切らなければと思っていたので、炎症を緩和するような薬を塗ることを、自分自身に禁じていた。ところがふと、子供の頃、信奉していた家庭薬メンソレータムを思い出した。蓋にナースの少女が描かれた懐かしの瓶を取り出して、顔に塗ってみると、なんかいい感じ。成長盛りの元気だった自分、鬱病以前の素朴だった頃を思い出した。イガイガ痛むビランの忌々しさの中で、自分はすっかり委縮していた。どうせ、まだまだこの痛みが続くんだからと、捨て鉢になっていた。全然そんなつもりはなかったのに、いつの間にかふてくされていたのだった。 もっと素直に、治ることを受け入れていいはずなのに。これじゃあ治りも遅くなるよなぁ。南先生も気持ちが前向きになれば、細胞の活動も活発になって、それだけ治りも早くなると、おっしゃっていたっけ。

この世では、木の葉が一枚、木から落ちるのも、人が生まれるのも、亡くなるのも、全て神のタイミングで起きている。細胞のやることに間違いないのは、日々の生活で実感している。ニキビひとつ、ビランひとつ、細胞の働きひとつも、カルマの解消できるタイミングで現れる。顔に現れた赤い傷口、こんなちっぽけな出来事も、宇宙の一瞬ごとに生まれ続ける大きなエネルギーの一部だったのだ。

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