沈黙
沈 黙
黙想の家で、黙想会に参加すると、一泊二日の間、沈黙の中で過ごす。廊下で誰かとすれ違っても、沈黙なので目礼さえしない。だから逆にその場の波動が伝わってくる。話しをするよりも直接的に、そこにいる人や状況が判る。もちろん、それを無視する。お互いさま応えないのだから。
与えられた部屋で、あるいは図書室や庭の木々の下で黙想する。黙想する人は、そこかしこにいる。そしてみんな沈黙している。
黙想する。神について考えるために。けれども私は、沈黙の意味、沈黙が語るもの、沈黙とは沈黙ではないことを体感していた。沈黙は話すことよりも、はるかにエネルギッシュに思われた。そのエネルギーは私を元気にするようだった。無駄話をすれば、気が晴れるだろう。憎らしい奴の悪口を言えば、すっきるするかもしれない。しかし沈黙の方が、はるかに効くところがあったのだ。
もし、誰かと二人でいて、何も語らず、何もせず、沈黙の中に佇んで、違和感がなければ、そこには調和がある。沈黙は高いオクターブの調和だった。
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