空に溶ける
空に溶ける
青空の写真を撮って、そこに赤鉛筆ですっと線を引く。そういう作品を作っていますと、その人は言った。空に赤鉛筆で線? 見るとまるで空に傷をつけているよう。
なんだか解る気がした。空に赤い傷を描き込みながら、考えているんだ。人がみんな背負っているカルマについて。なぜならその人の顔半分は、肉が雪崩を起こしたようだったのだ*。
* D.リンチ監督の映画「エレファントマン」で一躍有名になった皮膚と骨が突如、異常増殖する遺伝子疾患。21世紀になってアメリカの研究機関により、病名がプロテウス症候群と命名された。
正直、その人と話し始めたときは、怖かった。けれどもその目は美しかった。ニヒルだけど澄んでいて、きらきら輝くひとつしかないその目を、私は信じた。
ビランの痛みに耐えていたら、ふと思い出した出来事だった。心の青空に、赤い傷を描き込みながら、自分の痛み、人類の痛み、惑星の痛みについて想う・・・苛立ちと心配から来る炎症の痛み。人類というグループが背負っている大きなカルマでもある。地球という惑星単位でも、カルマがあるという。
空に溶ける・・・そう、癒しが起きるとき、なんだかそんな感じがする。ハンマーで殴られるような頭痛から、母の手当てで立ち直ったときに得た感覚。自分がぐーんと引き上げられて、天へ舞い上がるような感じ。
その反対もあった。古美術店の仏壇の横に立っていたら、ひゅるるるっとヴォルテックス(渦巻)が降ってきて、私の周りを取り巻いた。えっ今のは何? 意味不明のまま数日後、ひどい目に遭った。普通に歩いていただけなのに、道端で捻挫して、そのまま仕事に行ったら、職場で貧血を起こして気絶してしまった。こんなこと初めてだったから、あの渦巻は地縛霊だったと解った。死者は人の足を借りて、生前の挨拶回りをすることがあるという。以来、上から降ってくるのは変なもの・・・異常波動かもしれないと、思うことにした。
空に解放されるような感じ。それは間違いなく癒しだ。正常波動への回帰。正常と異常、両方体験しておかないと、区別がつかないのだった。
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