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人魚姫

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marmaid 人魚姫

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暮れに懐かしのソビエト映画「人魚姫」を観ました。学校が冬休みだったとき、お昼の時間帯に放送されていたのを観て、何だか素敵だったなぁと思っていたので、再会して喜びました。

人魚姫 今見ると、いろいろ見逃していたところがありました。時代設定が中世の魔女狩りの時代になっていたんですね。これは相当シビアな設定です。メルヘンでありながら甘くなり過ぎないストーリー展開が見事です。小さな異形の姫は、船上パーティをやっている大きな船に、網をつたってよじ登って、王子を見つけます。王子も、おや、あれは?という感じで小さな姫を見つける・・・二人はちゃんと出会っている。目が合った瞬間、海中に飛び込んで隠れてしまった姫を見て、な~んだ、つまんないなと王子さんが思っていると、船員たちが人魚だ人魚だ!と騒ぎだす。見ると沖合の岩の上に、歌いながら船を招き寄せている人魚たちが!姫のお姉さま方なんですが、見事に船は座礁。人魚って船乗りたちにとっては、魔物なんですね。けれども姫は海中に投げ出された王子を、岸辺まで運んで助ける。緑の髪で彼の顔をぬぐいながら、どうぞ気が付いてと心の中で呼びかける。マグダラのマリアがイエスの足に香油をかけて。涙ながらに自分の髪でイエスの足をぬぐう有名な話があるので、女性の長い髪は介抱や改悛というイメージもあるんだなぁと、深読みして喜んでいました。王子の年齢設定は15歳。日本でも元福の年齢だから、昔の人は早く大人になったわけで、もう結婚を考える年なんですね。

marmaid 人魚姫が王子の介抱を続けていると、乗馬を楽しんでいる人間のお姫様が、お供の者たちと通りがかって、岸辺に倒れている王子を連れ去って行く。王子は一瞬気が付いて、人間の姫を命の恩人と思い込む。アタシが助けたのにと人魚姫の無念。王子にもう一度会えないなら死んでしまうと思い詰めます。そこへ姫を助ける人物が現れるんですね。サルピシウスという名の流れ者のオッサンで、彼が物語の進行役。そしてアンデルセンの原作にはないオチがついています。人魚姫の恋が破れても、姫のために命を捨てる人が現れるなら、彼女は海の泡にはならず、人々の永遠の夢になる。そして人魚姫に出会った人には幸せが来る・・・ロシアにはこういう伝説があるんでしょうか? でも、解りますよね、美しい人魚に出会ったらラッキーというの。だって会ってみたいもん。

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人魚姫 さらに気が付いたのは、このサルピシウス役の俳優さん、人魚姫より前に「カラマーゾフの兄弟」に出演していて、スメルジャコフをやっていたこと。カラマーゾフ観ていたので、おっ?どこかで見たと思ったらの感嘆符でした。スメルジャコフは、ほの暗い信念に燃えて自己崩壊する典型的な破滅型の人間ですが、サルピシウスは夢に死す、酔狂な男。こういうアウトサイダーな役どころが、得意な俳優さんなんでしょう。

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人間の姫様が命の恩人だと思っている王子は、騎士らしく姫と結婚する決心をします。ろうそくを両手に持って、結婚の披露宴へ先達をする我らが異形の姫は、泣きの涙。お祝いは村中、夜通し続き、花火が打ち上がる中、旅芸人たちが歌ったり踊ったりの大賑わい。涙の姫も突如、踊り輪の中に入って、はしゃぎはじめます。その陽気な有様がほんとに悲しい。夜が明けたら、消えてなくなる運命の時が来るわけで、切ないんですが、姫自身は何も後悔していないと、宿屋の女将にきっぱり言うんです。愛は自己犠牲を厭わない。この姿、やっぱり美しいです。

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人魚姫 お祝いの酒を浴びるように飲んで、ばか騒ぎをする村人たちに、姫のために命を捨てる輩はいないのか?と、宿屋の女将が大声で呼びかけます。この宿の女将こそ、じつは魔女で、姫の魚の尻尾を足に変えた張本人。この女将さん、なかなかニクイお方です。もう魔法を使うのに疲れた、世界は何もかわりゃしないのにと歌いながら(この独白、ミュージカル仕立てなのが面白い)人の望みを叶えるために魔法を使っている。サルピシウスが小さな人魚姫が、親元を離れて王子に会いに来ている。何とかならないか?と、持ちかける。やれやれという顔をしながら、ちゃんと希望をかなえる。姫のかなわぬ恋の顛末を知りながらも、協力してしまう。代償として姫の緑色の髪を要求するんだけど、姫は緑の髪を手放して、きれいな金髪になってより人間の少女らしくなるわけです。

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marmaid さて朝日が昇って、運命の時が来ます。花嫁の手をひいてお城へ歩く王子の前に、仮面の男が現れて、お前は偽善者だ!と言って、足元に手袋を投げます。謎の仮面の男、不可解にも途中でわざと剣を投げ捨て、王子のねらった一撃をよけもせず、腹に剣をつきたてて、薔薇の茂みの傍らに倒れます。驚いた王子が仮面をはがすとサルピシウスなので、なんのためだ?と詰め寄ると、彼は王子に向かって、あなたは夢を探していたはずだったのに、見逃しましたね。あなたの夢こそ、あの小さな人魚姫だったのにと告げます。私の人生は失敗だったが、今死ねば、あの小さな人魚姫は、人々の永遠の夢になれる、と言って目を閉じます。

この告白を聞いた王子は、小さな姫がいないことに気が付ついて、行方を探します。ああ、ここにいたと思えば、そこにあるのは、置き去りにされた一輪の薔薇(黄色い薔薇)という見事なオチに拍手喝采、感涙したモニカでした。薔薇の隠喩が見事です。

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変な絵、どうしてこうなったのか?

人魚姫

我、彼女を愛す アイス 愛す

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このお話し全体は、19世紀の駅馬車の中、乗り合い客たちがキャストになっている設定なんです。旅の少女が、向かいの席に座っている新婚らしきな若夫婦のダンナさんを見つめている。少女が人魚姫で、若旦那が王子様、お嫁さんがお城の姫様、少女の隣に座って、若旦那に見とれている少女に同情して、人魚姫の物語を語り始める男がサルピシウス。少女が若旦那を見つめ続けるのを叱責する居眠りの中年女(お母さんなのか?)が、宿の女将さんという役回り。劇中劇に仕立ててあるので、悲しいお話しの結末が悲しくなり過ぎない、子供さんが見ても、トラウマにならない配慮があるなぁと。そして人魚というと上半身が裸と思いきや、この映画の姫はちゃんと薄物を着ているんです。貝殻のブラジャーなど俗っぽい装身具もなし。少女の裸や体を見せものにしていない演出も秀逸でした。

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人魚姫 魔女を信じている中世の人たちは、噂話を良しにつけ、悪しきにつけ、すぐ信じる・・・黒猫が悪魔の化身だとか、カラスは不吉だとかの噂もこの辺りから徐々に広がったらしいのです。映画の中でも、人魚姫が海から上がったのを見たと、告げ口する人がいて、みんな大騒ぎ「彼女を燃やせ、彼女を燃やせ!」と、薪を組んで火刑の始まり始まり、みたいなシーンが出てきます。サルピシウスが機転をきかせて自分たちは旅のコメディアン!彼女は私の娘だと宣言して、みんなを笑わせているところへ、姫を伴って王子が駆けつけ、彼女は人魚ではないと宣言、サルピシウスに褒美として、お金の入った巾着をぽんと投げて場を収めるんですが、昔の素朴な人々は、こんな風に異界の存在を恐れていたんだなぁと。素朴な心は騙されやすいでしょうが、異界の存在と仲良くなったり、助けてあげて、恩返しがあったりする。こういうの、ホントだろうなと思います。

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アメリカでは童話はハッピーエンドでなければいけないという法律があるそうなんですが、それじゃちょっと単純すぎるから、このひねりの効いたお話しの作り方素晴らしいなと、奥が深い解釈だと賛嘆の念を禁じ得ないのでした。Русалочка(ルッサローチカ・人魚姫)万歳!

ところで王子の名はアントワヌ!誘惑を退けた聖アントニウスは有名ですから、ウガッテいるお名前です。アントワヌの対局の名前は、悪魔に魂を売ったファウスト。暮れにシャルル・グノーのオペラ「ファウストの業罰」も観ていました。わたしは「メフィスト・ワルツ」が大好きです。

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思ったんです。人魚ってきっと海臭いんじゃないかと? 海から上がったペンギンを、抱っこしたことがある遠縁の伯母が、海臭いのよって言っていたんですね。でも、いいんだ。人魚は上半分美人さんなんだから。

人魚姫

みんなどこかで、異界の美しい存在を夢みているんじゃないか? O嬢の「けしからん!」は定番になってしまってというわけで、コメディなお二人でした。

セイレーン
セイレーン

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