Blog いんぱるぱぶれ

薔薇の精

薔薇の精

薔薇の精

薔薇の精

薔薇を一輪摘み取って、胸元に飾ると少女は初めての舞踏会へ出かけた。夜半過ぎ一人部屋へ戻れば、冷めやらぬ思いと共に胸元の薔薇の花を手に取る。薔薇はいつでも憧れの形見、椅子の背もたれに身を沈めるとたちまち夢見の中へ落ちた。

すると声なき声で薔薇の花が語りだす。お前は私を摘み取った。その胸がわが永遠の褥、花びらから立ち上るこの香りこそわが魂なのだと。これってバレエの台本だと思っていたら、ティオフィール・ゴーティエの詩だったとは!

ゴーティエといえば、ボードレールが完全無欠な詩人と讃え、わが師にして友である君へ、限りなき謙譲の意をこめてこの病める花々(詩集:悪の華)を捧げると書いたその人だった。

ゴーティエは少女の胸に薔薇の花死せりと書き、ボードレールは幽霊(悪の華の中の作品のひとつ)の中で、お前を愛する男らが、優しさをもってすることを、私は恐怖をもって支配したいと書いている。ゴーティエはロマン派の詩人。ボードレールは象徴派の詩人。19世紀は悪魔や天使が等身大で活躍した最後の時代、死のとらえ方もロマンチックだった。

時代は21世紀になった。やがて人々は死が次元移動に過ぎないと知る時が来るだろうといわれている。どういう世界に行くのかは、魂の原動力にかかっている。より遠くへ高く飛べる方がいいんだろうけど、誰よりも高く遠くへ跳べる踊り手だったニジンスキーは、跳躍の果てに自分を閉ざしてしまった。薔薇の精を体現した不世出の踊り手は狂気に陥ってしまった・・・なぜか?

日常というものが、果てしなく重くなるときがある。指一本動かすにも重い。そこが狂気の入り口になる。 朝、目をさます。服を着替えて洗面や食事をすませて一日へ漕ぎ出す。これがとてつもなく重くなるのだ。あれは祖母が心臓に支障をきたし始めたときだった。真夜中、息苦しさに目を覚ました彼女は、すでにベッドで眠っている私の上に覆いかぶさってきた。はぁはぁ言っている気配に目を覚ました私だったが、恐怖で口をきくことはおろか、身じろぎすらできなかった。しばらくすると祖母は離れていった。翌朝、話を聞いたら「胸が苦しくなってどうしたらいいか分らなかったから、あなた(私)のところへ行って覆いかぶさったら、ああこうしていればいいと思ったの、寝てるのに悪いと思ったけど」ということだった。こういうことが何度かあった。暗闇の中で目を覚ます。家人である祖母は今や死の影を帯びている。そのときああ死神がいる、現実にいるんだと思った。ときに私は13歳、怖かったので誰か大人に相談したくて、学校の先生に話してみたが、同情はしてくれたけど助けにはならなかった。いるんだけど両親という人たちと我が人生は縁がない。夜な夜な恐怖の素に変貌する家人に私はひとり耐えねばならなかった。

祖母はこのあとすぐに、同年代のお友達だったご婦人から、座して死を待つのは嫌よ!と檄を飛ばされて、乃木坂の心臓血管研究所で検査を受けることになり、僧帽弁狭窄症と診断されて、無事手術を完了し、それから20年の歳月を生き延びて、90歳で天寿を全うした。

あのとき私は、日常の中に死の影を見ていた。自分の死ではない死の恐怖は、そののち家人を看取る地道な介護への辛抱に変わっていったけど、恐怖を前にして思ったことは、ここで自分の気が変になったらいけないということだった。耐えなければならないのだ。けれども15歳を過ぎたころから鬱になって、狂気がすぐ傍らで口を開けていたこともあったと思うけど、自分の中には狂ってたまるか!がいつもあった。

なぜ気が狂うのか? 自分の感情の波にのまれてしまうとおかしくなり始める。踏み止まれ!そして自分は崖っぷちで踏みとどまれたから、今ここにこうしている。ニジンスキーと再会したのは、恐怖が来ても死の影がきても、どうしたら気が変になったりしないでいられるのか、再考するためだったろうか?

波動修正で心身を修復していると、過去が蘇ってくるのはよくあること。向き合って理解できるときが来るとそれはやってくる。自分の中のごちゃごちゃした要因を整理して考える指針として、肉体・感情体・霊体という三つボディがある。肉体的な症状が出ているけれど、それは過去生の中でどういう感情的なダメージを受けたのが原因か?負のエネルギーである想念がいかに今の自分のなかで作用を及ぼしているのか?考えてみる。目に見えない世界の方が目に見えている世界より大きいのだから。

◆ ◆ ◆

誰の心の中にも、まだ見ぬキリストという神秘が隠れている。私の中の本当の私、魂、真我、何と呼ぼうとその私が心の中に隠れている神秘のキリストと出会う。花婿であるキリストが魂である花嫁を神へと導く。それが神との結婚。イエスが言った「私と父はひとつだ」ということ。こうして神との結婚を果たした人は、他の人々のために、まだひとつになっていない人々のために働く。それが真の奉仕だとジュワルクール大師はいう。薔薇の精は妖精だから人々のために働かなくて良かったんだね。

改めてお会いして見ると特異なお方です、ヴァスラフ様。

薔薇の精

受け口なんだよね、描いてみて実感。

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