ブタを殴る
ブタを殴る
「このブタ!」手に持っていた本で、職場の先輩にあたるソノヒトを殴った。ソノヒトは悔しがり、モニカとはもう一緒に働けないと言って、オーナーの前で大泣きした。オーナーはあきれて、「子供みたいにワーワー泣くんだよ、何あれ?」と、言った。あとで聞いた話だと、ソノヒトは私の前にも3人、相方の女性を泣かして辞めせていた。気に入らない奴はいびって追い出す趣味があったのだ。しかし私は辞めるわけには行かなかったのだ。母の介護と仕事を両立させるには、徒歩通勤できるその職場が最善だったから。人を泣かすようなことをしていれば、いつか自分も泣かされる時が来ると、還暦過ぎても分かっていなかったその人を、今では気の毒に思う。殴ったことは謝って、ソノヒトと私は、そのあとも4年一緒に働いた。
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