最初の異変
どうして自分がこんな目に? そう思う時があるけれど、原因は必ず自分の中にある。そんなこと認めたくない。絶対に嫌だ。悪いのは・・・反発の激情が引けば、現実はやはりそうなのだ。ビランギランが私に知らしめたのは、まさにそこだった。因果応報、すべてはブーメランのように我に戻るなり。
突き指したわけでもないし、痛くも何ともない。だけどくっきり痣みたいになっているのはどうしてだろう?嫌な予感がした。皮下で何かが起こっているんだ。うすうす感じられたのは、これが炎症に違いないということ。それには祖母の昔語りに覚えがあった。
祖母が女学生だったとき、クラスに女学生だったとき、クラスにライ病だと噂のあった女の子がいた。手をつなぐと病気がうつると言って、みんなが彼女を遠巻きにした。だから祖母は、わざとぎっちり手をつないで彼女と遊んだ。ある時から、彼女は学校へ来なくなった。「もうそれっきり彼女とは会わなかったわ」と、祖母は言った。「きっとどこかへつれていかれちゃったのね」「その人、どんな風だったの?」と、私。「皮膚の下がね、何となく紫色をしていたわね。ほかは別になんでもないの。きれいな人だったのよ」
祖母が女学生だったのは、20世紀初頭、1920年代だ。皮膚の下が紫色という話を思い出しながら、私は痛くも痒くもなく、ただ静かに青ざめている自分の小指を見つめていた。
この記事へのコメントはありません。