緑色の顔をした猫
緑色の顔をした猫
彼女はときどき、この世へやってくる。しばらく来なかったけど荒療法イテテのさなか、私の夢に現れた。尻もちをついた現場、キッチンの冷蔵庫の前に佇んでいる。アップルグリーンのパウダーをはたいたみたいに、緑色の顔をしてこっちを見ている。
どうして緑なの? ずいぶん派手だね、そのアップルグリーン。痛いのガマンしている私を笑わせようと、そんな顔して出てきたの? おまえは美人だったけど、どこかひょうきんな娘(こ)だった。久しぶりだね、ありがと。
9月だったね、彼岸を過ぎたころ、おまえは命を全うした。あれからもう20年くらい経つけれど、今もこうして心で会えるから、いいんだ。
私は彼女に操を立てて、もう猫は飼わないと決めている。






















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